こんなときどうするの?

 長引く咳について

  長引く咳の原因

  呼吸音をしっかり聞くこと

  喘息の時の気管支の状態

  呼吸音とはどんな音?

  気管支の状態を見ると薬が変わる

  気管支の状態を見ることが大切

  患者さんの例

  最後に

長引く咳の原因

 1ヶ月以上咳が続いてよくならない。薬を飲んでいるがよくならない。

 ネットで検索すると風邪、気管支炎、肺炎、クループ症候群、副鼻腔炎、気管支喘息、咳喘息、百日咳、気道異物、胃食道逆流症、心因性咳嗽などが原因と出てきます。

 当院にもこのような患者さんが時々来られます。そのほとんどが喘息でした。

 他の病院では喘息ではないと言われているという方がほとんどでアレルギー科とかアレルギー専門医でみてもらっていたりもします。

 ではなぜ当院では喘息と診断されるのでしょうか。

 呼吸音をしっかり聞くこと

 一番の違いは診察の仕方です。呼吸音をしっかりと聴診します。ただ聴診器をあてるだけでなくしっかりと深く呼吸をしてもらい呼吸音を聞き気管支の状態を見てゆきます。気管支の状態を詳しく知ることで適切な治療ができます。

 気管支の状態をみる検査にはスパイロメーター、モストグラフや一酸化窒素NO検査があります。

 確かにこれら肺機能検査といわれているものは呼吸機能すなわち気管支の状態をみるものです。

 大勢の患者さんを次々とひとりひとり測ることは忙しい外来では無理です。たまにスパロメーターをして気管支の状態を見たり、モストグラフで見たりすることはできますが毎回毎回その都度測ることはできません。また、スパイロメーターは大変苦しい検査です。小さなこどもでは出来ません。

 喘息のときの気管支の状態

 呼吸音解析の研究が進み肺音を解析することにより気管支の状態が分かるようになりました。

 毎回呼吸音を解析するのは大変ですが、聴診器を当てて風車を吹かせるなどのしっかりと呼吸をさせることによって気管支の状態が分かります。

 気管支の状態は大きく分けて3つに分かれます。  正常な気管支は粘膜の腫れはなく平滑で気管支も狭くありません。聴診ではほとんど音は聞こえません(Cの状態)。場所によっては気管支呼吸音が聞こえることもありますが通常肺音はきれいです。

 正常な気管支はひどくなると気管支は縮んでしまい粘膜は腫れ上がります。このようなときに聴診するとヒューヒュー聞こえます。または全く音がしないこともあります(Aの状態)。

 この狭くなった気管支が広がってくると気管支の中に痰が出てきます。または喘息があまりひどくない軽い状態だとこの状態になります。呼吸音を聞くとゼロゼロという痰がつぶれる音がします(Bの状態)。

 三つの状態のどの状態に気管支がなっているのかを見てゆきます。狭くなった気管支がよくなると気管支は広がりゼロゼロという音になります。

 そして、気管支の腫れがとれると音は聞こえなくなります。気管支の状態は正常になります。また、正常だった気管支が感染をおこすと狭い状態になったり、軽いとゼロゼロの状態になります。

 呼吸音とはどんな音?

 当院では胸の音を聴診するときにしっかりと呼吸をしてもらいます。これがとても大切なことなのです。

 例えばホースの中に水がたまっていることを想像してください。

 ゆっくりとそのホースを端から吹いたときはあまり音はしないと思いますが、強く勢いよく吹くとゼロゼロとかゴロゴロとか音がすると思います。

 気管支は管です。管の中に痰がたまっていたり、またはその管がとても細くなり狭くなっていると勢いよく空気が通ると音がします。でも、空気の流れがゆっくりだと音はしません。

 つまり一生懸命呼吸をしてもらって肺音を聞いたときと安静な状態で普通に呼吸をした状態で肺音を聞いたときと肺音の聞こえ方が違ってくるのです。

 当院ではしっかりと呼吸をしてもらい肺の音を聞いています。また、それ以外にも気管支拡張剤の吸入をして音がどのように変化するのを聞いています。そうすることにより気管支の状態を見ています。

 例えば咳が出ているときにただ聴診器を当てただけのときは全く肺音はきれいでも、しっかりと呼吸をしてもらうとゼロゼロすることがあります。

 気管支の状態をみると薬が変わる

 気管支の状態はこのときどうのように判断するでしょうか。

 しっかりと呼吸をしないで聴診器をあてたときは音はしないので気管支の状態は正常(Cの状態)と判断するでしょう。

 しかし、しっかりと呼吸をしたときはゼロゼロと聞こえるので気管支が腫れて痰が詰まっている状態すなわち気管支炎の状態(Bの状態)と診断することになります。診断が全く違ってきます。当然薬も違ってきます。

 気管支が正常ならアスベリンなどの咳止めを飲めば良くなりますが、Bの場合にはアスベリンなどの咳止めを飲んでも今ひとつ良くならず気管支拡張剤と去痰剤が必要になります。

 また、咳は痰を出すために出ているのですぐにはよくならず気管支の腫れがとれ痰が出ていって初めてよくなります。

 さらに、咳止めを出すことにより痰を出すことを止めてしまうためからだがよくなろうとしているのを邪魔することになります。

 気管支の状態を見ることが大切

 このように診察の仕方を工夫して気管支の状態をしっかりと知ることで治療が全く違ってくるのです。

 気管支の状態を知ることかがとても大切になってきます。

 それと気管支の状態を知る上で大切なことは気管支拡張剤を吸入してもらうことです。

 気管支拡張剤の吸入をすることにより気管支の状態の変化をみることができます。

 そして、どのような状態なのかより一層はっきりします。例えばしっかりと呼吸をしてもらっても音がしないとき気管支は正常だと思われます。

 しかし、気管支拡張剤を吸入すると、狭くなっている気管支は吸入により広がり同時に痰が気管支内に出てきます。

 痰が気管支内に出てくると痰が潰れる音つまりゼロゼロした音が出てきます。

 気管支の状態が正常ならば気管支拡張剤を吸入しても音は変わりません。また、一度吸入しても音は変わらなくても二度することでゼロゼロしてくることがあります。このような場合はかなりしっかりと気管支が収縮していることになります。

 当院では長引く咳の患者さんにはこのような診察をするのでとても時間がかかります。

 三度も診察することも多くなかなか診察が進みません。でも、気管支の状態がわからずあやふやな状態で診察をすると治療がうまくいきません。

 また、咳がでなくなっても呼吸音はゼロゼロしていることもありまだしっかりと治っていないこともわかります。そのため当院で咳が出ていなくても胸がゼロゼロしていると指摘しますが他院では肺音はきれいといわれることもよくあります。

 患者さんの例

次に実際どのような患者さんが来るのかお話します。実際の患者さんと少し変えています。

 4歳の男子でずっと1ヶ月以上咳がよくならないということで受診しました。

 前医で見てもらっていましたが咳がなかなかよくならずに受診されました。

 喘息とはいわれていません。風車を吹いてもらい呼吸をしっかりしてもらい診察するとかすかに背中の方でヒューと音がした感じがしました。でもほとんど音はしない状態でした。

 気管支拡張剤を吸入したところ前の方は音はせず背中で少しゼロゼロしてきました。

 さらにもう一度吸入するとはっきりとゼロゼロという音がでてきました。

 気管支の状態はCではなくAの状態で二度吸入してやっとはっきりとゼロゼロしてきたので、かなり気管支がしっかりと収縮し狭くなっていることがわかりました。

 ステロイドを内服しモンテルカストと気管支拡張剤と去痰剤を飲んでもらい翌週再度受診してもらい肺音がゼロゼロしているのが確認できました。

 ステロイドの内服は終了し他の薬を続けその後よくなり吸入しても肺の音はしなくなりました。

 このように呼吸音がきれいな場合喘息と診断されていないことが多くあります。

 喘息は呼吸音がヒューヒューするものだといわれているので胸の音がきれいだと喘息とは診断されていないことが多くあります。

 でも、しっかりと呼吸して気管支拡張剤を吸入して気管支の状態をみると気管支ががっちりと収縮した喘息だということがはっきりします。

 この状態を隠れ喘息と呼んでいます。

 最後に

 最初にネットで検索して風邪、気管支炎、肺炎、クループ症候群、副鼻腔炎、気管支喘息、咳喘息、百日咳、気道異物、胃食道逆流症、心因性咳嗽の可能性があるとでてきました。

 今までの経験では気道異物、胃食道逆流症、心因性咳嗽は別として元々喘息の体質がある場合に風邪をひいたり、マイコプラズマに感染したり、様々な感染症にかかることにより喘息が悪化している場合がほとんどでした。

 特に新型コロナウイルス感染後やインフルエンザ感染後は気管支が収縮していることが多く、それにもかかわらず肺音が全くしないため喘息とは思われずに咳が長引いていることがよくあります。

 咳がひどく肺の音がしないときは気管支がかなり収縮している状態なのでステロイドの内服をしないと気管支は広がりません。

 通常ステロイドの内服は呼吸困難になるような喘息がひどい状態の発作の時に使うのですが気管支の状態をみてゆくと通常の気管支拡張剤のプロカテロール(メプチン)やホクナリン、または吸入ステロイドでは全く広がることはありません。

 特に吸入ステロイドは咳がひどいときはせき込んで吸入することはできず充分な効果を発揮することはできません。

 呼吸音が正常で吸入を重ねることにより肺音がゼロゼロ変化することがよくありステロイドの内服をしないと気管支がなかなか広がってきません。

 新型コロナウイルスの後遺症と思われていることもありますが実は新型コロナウイルスの感染により喘息が悪化しているにすぎません。

 しっかりと気管支を広げれば良くなってゆきます。

 時に肺炎、副鼻腔炎、クループを合併していることがありますが基本は喘息の体質を親または祖父母から遺伝しており感染により増悪しているパターンがほとんどでした。

 まだまだ自分も不完全ですが30年間クリニックでの診療を続けてきてたどり着いた結論です。

 いかに気管支の状態を知っていくかがしっかりと治す基本になります。

 咳で悩んでいる方がいらっしゃったらお力になれれば幸いです。

 

熱がでたとき

発熱に気づいたらなるべく早く受診しましょう。
気づいたのが夜中だったらあわてないで、そのまま様子をみてください。朝になったら病院へ。

冷やす?・・・

冷やしても熱はすぐに下がりません。
冷やしたければ、わきの下や足の付け根を冷やしてね。

解熱剤を使う?・・・

使わなくてもかまいません。40度でても脳がやられることはありません。
使うときは38.5度以上で、元気がないとき。元気なら使わなくてもよいです。

けいれんしたときはすぐに病院へつれていきましょう。
生後4か月までの乳児やぐったりしているときは、早めに受診しましょう。
4日以上熱が続いたら心配です。必ず受診してください。

こどもの熱は37.5度以上です。
昼間熱がさがっても夜にまたあがるときがあります。
一日のいちばん高い熱が37.5度以下なら熱がさがったとして普通の生活にもどしてください。

クリニックでドクターに伝えてほしいこと

1)いつから熱がでたか?
熱は幼稚園児までは37.5度は平熱です。37.5度以上になった日が初日です。
2)その日の一番高い熱が何度か教えてください。
朝37度で夜39度まであがったらその日は39度です。

 

吐いてしまった時

まずは、ものを食べさせないでください。
水分はスポーツドリンクのようなものをスプーンで少しずつなめさせてみましょう。

または、スポイトで1滴ずつあげてみましょう。
コップ1杯を1時間くらいかけてゆっくりと。

クリニックでドクターに伝えてほしいこと

1)いつから1日に何回吐いたか?
2)咳き込んで吐いたか?それとも咳とは関係なく吐いているか?
3)どんなものを吐いたか?色は?
4)おしっこの回数、色。

 

下痢をしたとき

水分をたくさん与えましょう。水分はスポーツドリンク等、できればOS-1などの経口補液剤がよいでしょう。

水、お茶はだめ。

おしっこの色を見る。濃いようなら薄くなるまで与えましょう。
食事は脂肪の多いものはあげないで炭水化物中心に。
下痢の回数が10回以上なら1日食事はあげず、水分だけにしましょう。

クリニックでドクターに伝えてほしいこと

1)いつから?下痢の回数は?
2)どんな形?水様かどろどろ、少し柔らかいくらいなど
3)食欲は?
4)赤ちゃんの場合はできれば便をおむつごと持ってきてください。

 

けいれんしたとき

時間をはかります。10分以内ならあわてなくても大丈夫です。
10分以上ならすぐに病院へ連れて行ってください。
口の中にものを入れない。指を入れたり、タオルを入れたりしない。
どんなけいれんか観察し、できれば携帯電話やスマホなどでビデオ撮影してください。
短いけいれんでも2回以上あればなるべく早く受診してください。

クリニックでドクターに伝えてほしいこと

1)熱があったか?
2)けいれんしていた時間。
3)どんなけいれんだったか?
4)なるべくけいれんを見た人が一緒に来てください。保育園や幼稚園などで起きた時は見た人から様子を聞いておいてください。